こんにちは、こみあげです。
旅の醍醐味、出会い。
今回は僕の心を揺さぶった『優しく強い男』を特集します。
ではいきましょう!
サンティアゴデクーバの『サーマニー』
その男に出会ったのはキューバの最果ての地、サンティアゴデクーバ。
『サルサ音楽の聖地』と言われるこの町は、僕がキューバで絶対行きたかった町の一つ。
やっとこさ到着した時は、歓喜のあまり奇声を発したのを覚えている。
とにかくエネルギーの強い町なんだけど、忘れられない出会いがここであった。
キューバ人のたかりに嫌気
ここまでハバナ→バラデロ→サンティアゴデクーバとキューバ国内を旅していた僕ら。
街並みや文化には心踊ろされていたが、実はキューバ人のしつこい『たかり』に嫌気がさしていた。社会主義国家で毎月の給付金は4000円程度という彼らにとって、僕らツーリストは簡単にお金や物をくれるボーナスタイムのようなものなのか。
サンティアゴデクーバでも、ひどい『たかり』にあった。
ライブハウスで僕らに話しかけてきて、ずーーっと後を付けて、何かと『おごれおごれ』言ってくる男。
こいつ↓
こいつが本当にウザくてウザくて、どんだけ無視してもハイエナのように付いてくる。だからと言って、強引に追いかえせば何をされるか分からない恐怖もある。
結局、ある程度の高級なバーに入って、店員に追い返してもらったんだけど、それでも中に入ってきて『こいつらのガイドだ!』みたいなこと言ってたからね。なんなんだお前は。
まあ、こんな感じでキューバ国内で『嫌な思い』はしていたせいで、キューバ人に対しての印象は良いものではなかったんだ。
そんな思いの中サンティアゴデクーバでの旅を終え、ハバナに戻ろうとした時に事件は起きた。
満席なわけがない!チケットを売ってくれない?!
ハバナへのバスチケットを取るために、ターミナルへ行ったのはAM11:00。
僕らが乗車するバスはPM22:00。
チケットカウンターで無精髭の男に、ハバナまでのチケットを要求すると信じられない返答がくる。
『満席だ!』
え、本当に?
仕方ないから、他の日時で空きを教えてくれと言っても、一向に取り合ってくれない。意味不明の対応に事態をよく理解していなかったけど、どうやら『意地悪』されていたようだね。
まあ簡単に言うと東洋人への『人種差別』で彼らには全部、中国人に見えている。
まさかチケットを売ってもらえないとは。同時にやりようのない悔しさがこみあげる。
(、、、こいつらまじでムカつくわ。)
この瞬間、この国のことを心底恨んでいたと思う。こういう思いをすると、周りの人間全てが敵に思えてくる。
しばらく妻とターミナルの隅で呆然としていた。
ふと、チケットカウンターをみると無精髭の男から、2PACみたいな青年に切り替わっている。
目が合う。
すると手招きして僕らを呼んでる、、、?
『お!』
ダメ元でチケットをお願いするとすんなりオーケー。わお。
これがサーマニーとの出会いだった。
世界の裏側で尊敬
『数日前にサンティアゴデクーバに来た君たちを見たよ!』
カウンター越しにサーマニーが気さくに話しかけてくる。
正直、僕の頭の中は『???』
それどころか『何が目的なんだ?』という疑念しかない。この状況下で急に親切にされると疑いの視線しかないよ。
でも今まで出会った『たかり野郎』とは質が違う。
必要以上に喋らないし愛想笑いもしない。それどころか目が綺麗で、芯の強さを感じる雰囲気。
『荷物預かろうか?』
サーマニーが言う。
『え?マジで?』
まさかの発言に膨らむ疑念。でも、このどデカイ荷物がなければ機動力が一気に上がり、出発までの時間を有意義に過ごせる。
妻と相談してサーマニーに預けることにした。
『ありがとう』
PM21:00
サンティアゴデクーバの最終日を満喫しターミナルに戻るとサーマニーがいた。
彼に指さし会話帳で精一杯のお礼を伝えたんだ。
すると、おもむろに僕らを誘う。
『ん?』っと思って付いていくと、なんと彼のロッカールームに招待してくれる。グレーで錆びついた細長いロッカーを開けると、中から酒が。
コップを差し出され、注がれるお酒。そして葉巻。
『シーっ』とやりながら、はにかむサーマニー。バスターミナルの冷えたコンクリートの上で、彼と杯を交わす。
彼が娘二人をもち、コンゴ奏者として成功を目指してる話や日本の話。
異国の地で、その日出会ったキューバ人にもてなされている。なぜにこうなったのかは分からないけど、国境を越え不思議な感覚に陥る。
(、、、あれ、前に出会ったことあるっけ?)
そんなはずはない。僕がサンティアゴデクーバへ来たのも初めてだし、彼もサンティアゴデクーバを出たことはないという。
なんだろう。
この記事を書いている最中も、サーマニーのことを鮮明に思い出せるほど『友情』を感じた時間だった。
最後に、妻には怒られたけど悪気なくチップのつもりで10クック(約1000円)を彼に差し出した。
チケットを買えたこと、そして僕らをもてなしてくれたこと。安心をくれたこと。その全部に『お金』で表現しようとした僕に、ニコッと笑って自分の胸を叩き、そして僕の胸を叩くサーマニー。
『心と心』
胸が熱くなった瞬間。『金じゃねえ、俺たちは繋がった』と伝えたかったのだろう。最後まで彼はお金を受け取らなかった。
ハバナへのバスの中。
サーマニーのことばかり考えていた。
『俺なら同じことできるのか?』
月の給料の1/4もの大金を差し出された時、彼と同じようにできるだろうか。
いや、正直今の自分にできる自信はない。
その感情が自分の中ではっきりした時、猛烈に悔しくなり同時に沸き立つ向上心を感じた。
10数年前、東京に出てきた当初の自分、言わば高みを目指し、純粋な自分で勝負しようと決心していた、あの時の精神レベルを思い出せ。
旅の神様がそっと教えてくれたこと。忘れない。
サーマニーありがとう。
彼が別れ際に僕に言ったセリフは『次、来た時はうちに泊まれよな!』だって。
子を連れて、きっとまた君に会いに行くよ。